ブランディング

ロゴを変えても、会社は変わらない

written by 中村 弘樹

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ロゴを新しくすれば、会社が変わる。採用も、なんとなく上向く。そう期待して見た目から手をつける会社は、少なくありません。でも、順番が逆だと思っています。ロゴは器で、中身をつくるのは、日々の仕事の積み重ねのほうです。

あのロゴが優れていたから、強くなったのか

誰もが知っているブランドのマークを、いくつか思い浮かべてみてください。かじられたりんご、緑の丸いコーヒー、三本線。名前を言わなくても浮かぶし、雰囲気まで立ち上がってくる。

では、あのロゴのデザインが優れていたから、あのブランドは強くなったのでしょうか。順番は逆だと思います。形だけを最初に見せられても、そんなに感想は出てこない。りんごですね、で終わる。マークを見て多くのものが立ち上がるのは、その形と一緒に過ごした時間が、こちらの中に溜まっているからです。ロゴが意味を持っていたのではなく、あとから意味が入っていった。

ロゴは器、注がれるのは日々の体験

ロゴは器だと思っています。それ自体はからっぽで、最初はただの形。そこにいい体験が注がれると中身が溜まり、がっかりする体験が注がれればそれも溜まる。同じマークでも人によって受ける印象が違うのは、その人がその器に何を注いできたかが違うからです。

組織にとって、その「注がれるもの」は何か。お客様の体験だけではありません。そこで働く人が、どんな気持ちで仕事をしているか。約束したことが、現場でちゃんと守られているか。社内で交わされる言葉が、外に出す言葉と食い違っていないか。器に溜まるのは、そういう内側の積み重ねです。だから、見た目を先に整えても、内側がちぐはぐなままだと、注がれるものがそろわない。

見た目を変えても、中身は変わらない

「ロゴを変えたら、採用や業績は変わりますか」と聞かれると、正直に「変えただけでは、たぶん変わりません」とお答えします。中身が変わっていないのに器だけ新しくしても、注がれるものは同じだからです。むしろ、これまで積み上げてきたものを、一度こぼしてしまうこともある。

これは、組織を変えようとするときにも起きます。制度を新しくする、スローガンを掲げる、見せ方を変える。器を替えることは目に見えるので、やった感があります。でも、そこで働く人の実感や、日々のやりとりが変わっていなければ、中身は動いていない。人が「この会社は変わった」と感じるのは、ロゴやスローガンではなく、隣の人の態度や、任され方が変わったときです。

形をつくる前に、何を大事にするかを言葉にする

もちろん、器がいらないわけではありません。器がなければ、そもそも注げない。見分けられること、思い出せること、積み重ねが一箇所に貯まること。ロゴにはその働きがあります。

だからこそ、つくるときの順番が大事になります。僕らがロゴやブランドのお手伝いをするとき、形を考える時間より、その前の時間のほうが長い。この会社は何を大事にしているのか。何をしないと決めているのか。誰に、どんな気持ちになってほしいのか。ひたすら聞いて、言葉にしていきます。そこが決まっていないと、形の良し悪しを判断できないからです。

そして、この「何を大事にするか」の言葉は、ロゴのためだけのものではありません。それは、社内の判断の基準になり、採用のときに誰に来てほしいかの軸になり、日々の仕事で迷ったときの拠りどころになる。外に見せる器を整える作業が、実は、内側をそろえる作業になっている。順番としては、内側が先で、外側があと。インターナルからはじめる、というのは、そういうことだと思っています。

積み重ねが、選ばれ続ける理由になる

強いロゴが強いのは、その形が長い時間、同じ姿で出続けてきたからです。派手さではなく、一貫と継続。それは、選ばれ続けるブランドの条件とほとんど同じです。毎回ちがう顔で出ていくものは、どこにも溜まらない。同じ器を使い続けているから、注いだものが一箇所に積み上がっていく。

だから、ロゴを新しくすること自体はゴールではありません。そこに何を注いでいくか。その注ぐものは、結局、組織の内側でつくられます。見た目を変える前に、自分たちが日々何を注いでいるかを見てみる。遠回りに見えて、それがいちばんの近道だと思っています。

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