組織づくり

抱え込む組織は、いちばん脆い

written by 中村 弘樹

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「自分がやったほうが早い」。リーダーなら、誰もが一度は思う言葉だと思います。短い目で見れば、それは本当です。でも、全部を自分が通さないと進まない組織は、その人が動けなくなった瞬間に止まる。強く見えて、いちばん脆い状態です。今日は、ひとりで抱えないほうが結局うまくいく、という話を、組織の側から書いてみます。

抱え込みは、なぜ起きるのか

人に任せず、自分で抱えてしまう理由は、だいたい三つに分かれます。一つは「自分でやったほうが早い」。説明の手間もいらないし、やり直しも出ない。二つ目は「頼むのが申し訳ない」。相手も忙しそうだから、と。三つ目が、たぶんいちばん根深くて、「任せると、思い通りにならない」。自分がやるのとは違うものが返ってくるのが怖くて、つい口を出す。結局、任せたはずなのに負担が減っていない。

どれも、その場では合理的に見えます。でも積み重なると、判断も情報も一人のところに集まり、その人がボトルネックになる。組織の成長が、一人のキャパシティで頭打ちになるんです。

「自分と違う」は、悪いことではない

抱え込みの根っこにあるのは、「自分と違うものが返ってくるのが怖い」という感覚だと思います。でも、自分と違うは、悪いことではありません。一人の頭で考えられることは限られていて、同じ人が考えると同じ答えにたどり着く。人に渡すと、自分では思いつかなかった角度が返ってくる。抱えているときには出てこなかったものが、手放した瞬間に出てくる。

これは、アウトプットの質の話でもあります。一人で仕上げたものより、途中で誰かの目が入ったもののほうが、たいてい良くなる。作っている本人は中身を全部知っているので、粗に気づけない。「初めて見る人の目」は、自分の中からは出てこないからです。任せることは、手を抜くことではなく、質を上げるための工程でもあります。

丸投げと、任せることは違う

ただし、「では全部任せよう」と放り出すのは、別の失敗です。丸投げは、何を大事にしているかを伝えないまま渡してしまうこと。返ってきたものが「思っていたのと違う」となり、やり直しになり、「やっぱり自分でやったほうが早い」に逆戻りする。多くのリーダーが、この悪循環を経験しているはずです。

任せるとは、「何を大事にしてほしいか」だけを渡して、やり方は相手に委ねること。ゴールのイメージは共有するが、そこへの行き方には口を出しすぎない。この基準さえ共有できていれば、メンバーは自分で判断して動けます。組織にとって大事なのは、細かい手順のマニュアルより、この「何を大事にするか」が言葉になっているかどうか。判断の拠りどころが共有されていれば、任せても、ばらばらにならない。

任せてもらえないと、人は育たない

頼まれる側から見ると、景色が変わります。「これをあなたにお願いしたい」と言われるのは、多くの場合、悪い気はしません。頼られることは、信頼されることでもあるからです。

そして、任せてもらえないと、人は育ちません。いつも横で全部やられてしまうと、経験する機会そのものがない。最初は時間がかかっても、失敗も込みで経験してもらう。そうやって、次から自分でできるようになる。抱え込むというのは、目の前の仕事を片づけている一方で、人が育つ機会を奪ってしまっている、ということでもあります。人が育つ組織をつくりたいなら、任せることは避けて通れません。

頼るのは、弱さではなく、強さの設計

頼るのは弱さだ、という思い込みは根強いものです。でも、本当に強い組織は、一人に依存していない組織です。自分にできないことを「これはお願いします」と言える。それは限界を認めることでもあり、勇気がいります。けれど、その勇気が、属人化を再現性に変えていく。全部を一人が抱えてパンクするより、早めに分け合えるほうが、組織としては強い。

やっかいなのは、抱え込んでいるとき、本人がいちばん気づきにくいことです。気づいたら、判断も情報も自分のところに溜まっている。だからこそ、ときどき立ち止まって「これは本当に自分でなければできないことか」と棚卸しをする。多くは、そうではありません。一つ手放すと、空いたところに、その人にしかできない本当の仕事が入ってくる。頼むのは申し訳ない、ではなく、頼ることで相手を信じている。そう捉え直すところから、抱え込まない組織づくりが始まると思っています。

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