伝わるホームページとは何か。逆説で「伝わらない」から考えてみる
written by 中村 弘樹
「伝わるホームページをつくります」というキャッチは、Web業界でずいぶん長く使われてきました。僕自身も、何度かこの言葉を使ってきた一人です。
でも、立ち止まって考えてみると、「伝わる」という言葉ほど、いろんな意味でぼんやりしているものもありません。今日はあえて、伝わらないサイトの構造から、本質を見にいってみたいと思います。
「伝わらない」は、情報量の問題ではない
伝わらないサイトの正体は、情報が足りないことではありません。むしろ情報はたくさんあるのに、そこから意味が立ち上がってこない、というケースのほうが多いです。
事業内容、サービス、実績、お知らせ。素材は揃っているのに、結局「この会社は、何をしてくれるところなのか」が読み終わったあとに残らない。情報の密度ではなく、解釈のしやすさが、足りていない状態です。
発信の言葉が、企業視点になりすぎる
もうひとつよくあるのが、サイト全体が「企業視点の発信」に偏っているケースです。
「私たちは◯◯を提供します」「私たちは◯◯を強みとしています」。間違ってはいないのですが、お客さま側からすると、「それは、私にとってどんな関係があるんだろう」が抜け落ちて聞こえます。発信ではなく、関連性が伝わるサイトの設計が必要だと感じます。
根っこにあるのは「自分たちが何者か」の言語化不足
サイトの構造をいくらいじっても、伝わり方が変わらないことがあります。そういう場合は、たいてい根っこに「自分たちが何者か」が言葉になっていない問題があります。
強みも実績も、ばらばらに転がっているだけで、ひとつの意味に統合されていない。だからサイトを訪れた人も、それぞれの情報を結びつけられないまま離脱していきます。
大事なのは「判断設計」
僕はサイト制作を、コンテンツ制作ではなく「判断設計」だと捉えています。
訪れた人が、どんな順番で何を理解すれば、自分のなかで「この会社は信頼できそう」と判断できるか。その理解の道筋を、設計図のように引いてあげる仕事です。順番が逆だったり、抽象語のまま進ませたりすると、判断はそこで止まってしまいます。
抽象語を、具体に変えていく
もうひとつのコツが、抽象語をできるだけ具体に翻訳していくことです。
「お客さまに寄り添います」「丁寧な仕事を心がけています」。こうした言葉そのままでは、ほとんど何も伝わりません。「最初の打ち合わせは2時間ほどお話を伺います」「制作後3ヶ月は無料で改善します」。具体に落ちて初めて、相手の頭のなかに像が結びます。
伝わるとは、相手の頭の中に順番が立ち上がること
伝わるホームページとは、情報が並んでいるサイトではなく、相手の頭の中に「正しい理解の順番」が立ち上がるサイトのことだと思います。
情報提供から、思考設計へ。視点をひとつずらすだけで、サイトの役割は大きく変わります。「伝わる」という言葉を使うときは、その下にどれだけ深く設計が入っているか、いつも自分に問い直しながらつくっています。