労働人口は過去最多。それでも人手不足が起きる理由を考える。
written by 中村 弘樹
「人手不足で、本当に困っています」。地方の経営者の方から、このお話を本当によく伺います。
ただ、データだけを見ると、日本の労働人口はこの数年で過去最多にまで膨らんでいるそうです。なのに、現場では人が足りない。今日は、この矛盾を僕なりに整理してみます。
労働人口は、たしかに過去最多
政府統計を見ると、女性就業者は約225万人増、高齢就業者は約476万人増、外国人労働者は約205万人と、ここ数年でしっかり伸びています。
かつての「人口減少だから、人がいない」という単純な構図ではすでにありません。働き手は確実に増えているのに、なぜ現場では枯渇感が続くのか。
コロナをきっかけに、人材が業種をまたいで移った
背景のひとつにあるのが、コロナ禍をきっかけに起きた業種をまたいだ人材移動です。
飲食業や観光業から離れた人たちは、その後別の業種に再就職し、元の業界には戻ってきていません。母数は同じでも、業種ごとの偏りは大きく変わりました。「人がいない」と言っているのは、特定の業種に偏った話でもあります。
企業側の要件も、静かに変わってきている
もうひとつ大事なのが、企業側の求める人物像が、ひそかに変わってきていることです。
「言われたとおりに、ちゃんと作業ができる人」だけでは、もう足りない。「お客さまと対話できる人」「現場の課題を見つけられる人」「自分から動ける人」。こうした要件を満たす人材は、業種を問わず取り合いになっています。
競争の起点が、「作る」から「課題を見つける」へ
これは、経営の競争軸そのものが移っているからだと思っています。
かつては「何を作るか」「いくらで作るか」が勝負の中心でした。でも、いまは商品の差が小さくなり、価格競争も限界に近い。「お客さまのどんな課題に応えられるか」が、選ばれる理由になっています。課題発見は、対話の中からしか生まれません。
「人手不足」の正体は、マッチング不足
こう考えてくると、いま起きているのは数の不足ではなく、マッチング不足だと言えそうです。
欲しい人材像が高度化し、提供側もまだその設計が追いついていない。経営側は採用ブランディングと育成の仕組みづくりに、求職者側は対話力と課題解決の経験に、それぞれ手を入れる時期に来ています。「人がいない」の前に、「合う人と、まだ出会えていない」と置き換えると、打ち手はずいぶん見えやすくなります。